秋の温泉は最高だ——とわかっていても、週末は混む。
10月の連休に箱根に行ったら、日帰り入浴の受付に60分待ちの列ができていた。露天風呂に入っても、四方を人に囲まれてゆっくりできなかった。翌朝、旅館の朝食を終えた後にもう一度温泉へ向かったら、誰もいない露天風呂で紅葉を独占できた——このコントラストが、すべてを物語っている。
秋の温泉旅行は、タイミングが9割だ。
紅葉シーズンの温泉地の混雑パターン
温泉地の混雑は、紅葉の見頃と曜日に大きく左右される。一般的なパターンは以下の通りだ。
最混雑ゾーン:土日・祝日の10時〜15時 日帰り温泉がもっとも混むのはこの時間帯。宿泊客がチェックアウトした後から、日帰り客が増えてくる。温泉施設の駐車場も埋まり、入浴できるまでに30〜60分待つことも珍しくない。
やや混雑:土日・祝日の朝(8〜10時)と夕方(16〜18時) 朝早くや夕方は比較的空いている。特に宿泊型施設の「チェックイン前の日帰り利用」は、朝の枠が限られることが多く、宿泊客と日帰り客が重ならない設計になっている施設もある。
狙い目:平日の午前中(9〜12時) 圧倒的に空いているのが平日の午前中だ。地元の常連さんがほとんどで、観光客は少ない。入浴待ちもなく、露天風呂をゆっくり楽しめる。
「混雑した温泉地で待ちながら入るより、空いた平日に一人でゆっくり入る方が、100倍気持ちいい」
紅葉の見頃と「一週ずらす」作戦
温泉地の混雑は、紅葉の見頃と完全に連動している。見頃の週末は予約が取れず、日帰りも行列ができる。そこで使えるのが「一週ずらす」作戦だ。
紅葉は「見頃の前」でも「見頃の後」でも、十分に美しい。特に「見頃が終わった後」の1週間は、観光客が急減する割に景色はまだ良く残っていることが多い。葉が落ちはじめ、地面が紅葉の絨毯になる「落ち葉の秋」も、それはそれで趣がある。
例えば、東北の乳頭温泉郷の紅葉見頃が10月中旬とすれば、10月末〜11月初旬に訪れると空いていてゆっくりできる。多少見頃を外しても、硫黄の匂いと茅葺きの景観は変わらない。
エリアの「穴場」を狙う
有名な温泉地ではなく、その周辺の「穴場エリア」を狙う方法もある。
例えば、箱根が混んでいるなら「湯河原」や「熱海」の日帰り施設を試してみよう。熱海は一時期の「映え系リゾート」ブームが落ち着き、平日は比較的落ち着いた雰囲気だ。同じ関東圏の温泉なら、群馬の四万温泉や福島の高湯温泉なども秋の紅葉が美しく、箱根ほど混雑しない。
東北では、有名な蔵王や乳頭温泉郷より、山形の赤倉温泉や肘折温泉が空いていることが多い。知名度が低い分、穴場の良さが生きている。
事前予約の賢い使い方
日帰り入浴の事前予約を受け付けている施設が増えている。特にホテルや旅館の日帰りプランは、ウェブ予約で「時間指定」ができる場合があり、待ち時間なしで入浴できる。GoTo施策などの割引が使えることもあるので、事前確認を怠らないようにしよう。
一方で、共同浴場や地域の小さな温泉施設は予約不要の場合がほとんど。こうした施設は土日でも意外と空いていることがある。大きな観光施設に人が集中している間に、地元の共同浴場をゆっくり楽しむ——そういうスマートな選択もある。
秋の温泉を最高にする「3つの準備」
最後に、秋の温泉旅をより良くする3つの実践的な準備を紹介したい。
①現地の紅葉情報を前日にチェック 各温泉地の観光協会ウェブサイトや「紅葉情報」サービスで、リアルタイムの色づき状況を確認しよう。「まだ早い」「もう終わった」という情報が旅の選択を変えてくれる。
②防寒を万全に 秋の温泉地、特に山間部は朝晩の冷え込みが激しい。10月末以降は気温が10℃を下回ることも多い。温泉施設内は暖かいが、移動中の防寒が必要だ。
③湯上がりのドリンクを持参 売店の少ない共同浴場や共同浴場に行く場合、湯上がりに飲む水やお茶を持参しておこう。乾燥した秋の空気で脱水になりやすいため、こまめな水分補給が大切だ。
秋の温泉旅行は、準備次第で全く違う体験になる。混雑の中で消耗するより、賢く動いて静かな秋の湯を独占してほしい。