和倉温泉は、高級旅館のイメージが強い温泉地だ。

「加賀屋」という旅館の名前を聞いたことがある人は多いだろう。プロが選ぶ旅館として何十年も1位を獲得してきた、日本を代表する高級旅館だ。その本拠地が和倉温泉——そう聞くと「普段着では行けない場所」という気がしてしまう。でも実際には、手ごろに日帰りで楽しめる施設もあるのだ。

和倉温泉へのアクセス

金沢駅からのと鉄道七尾線で約1時間、「和倉温泉駅」下車。特急「能登かがり火」を使えば乗り換えなしで行ける。または金沢駅からバスで約90分という選択肢もある。2024年の能登半島地震による影響はあるものの、温泉地への交通は徐々に復旧し、多くの施設が再開している。

和倉温泉は能登島の対岸、七尾湾に面した温泉地だ。泉質は塩化物泉(食塩泉)。pH7.7のアルカリ性で、肌になめらかになじむ柔らかい湯が特徴だ。ナトリウムを豊富に含むため、入浴後の保温力が高く「熱の湯」とも呼ばれる。冬の能登の寒さの中で、この湯の保温力は格別だ。

日帰り入浴ができる施設

高級旅館が多い和倉温泉だが、日帰り利用を受け付けている施設もいくつかある。その中でもっとも利用しやすいのが「総湯(和倉温泉お祭り会館内)」だ。2020年にリニューアルされた共同浴場で、大人500円という価格で和倉の湯を体験できる。

内風呂は広々としていて、地元の人から観光客まで気軽に利用できる雰囲気だ。七尾湾を望む窓からの眺めも美しく、温泉地らしい開放感がある。シャンプーやボディソープは持参するか、有料で購入できる。タオルのレンタルもあるので手ぶらでも問題ない。

もう少し贅沢したいなら、中規模のホテルが提供する日帰り入浴プランを利用する手もある。1,000〜2,000円程度で、内湯・露天風呂・サウナなどが使えるプランが複数の施設から提供されている。事前にウェブで確認・予約しておくと安心だ。

「高級旅館に泊まれなくても、和倉の湯には入れる。それだけで十分だ」

七尾湾の景色と能登の食

和倉温泉の魅力は湯だけではない。七尾湾に面しているため、新鮮な海の幸が手に入る。温泉街の食事処では能登牡蠣や甘えびの刺身、能登産の岩海苔などが楽しめる。

駅から温泉街へ向かう途中にある「和倉温泉お旅まつり会館」では、能登のお祭り文化を学ぶこともできる。和倉温泉は「お祭りの里」でもあり、毎年夏に行われる「お旅まつり」は重要無形民俗文化財に指定されている。

昼食は地元の食事処で能登の海鮮丼をいただいた。七尾湾で獲れた新鮮な魚介が、小ぶりな丼にぎっしりと盛られていた。甘みの強い甘えびと、脂ののったブリの刺身が特に印象的だった。この味は、能登に来なければ味わえない。

能登半島地震からの復興と、訪れる意義

2024年元日に起きた能登半島地震は、和倉温泉にも大きな影響を与えた。一部の旅館は現在も再建中であり、地域全体が復興の途上にある。だからこそ、今この地を訪れることに意義があると私は思っている。

消費が地域の回復を後押しする。日帰り温泉の料金も、地元の食事も、土産物も、そのすべてが能登の復興に繋がっている。「観光」が「支援」になる瞬間を、温泉旅を通じて体感できる場所——それが今の和倉温泉でもある。

温泉の湯は、地震があっても変わらず湧いている。その事実が、この温泉地の力強さを示しているような気がした。